第2回 中学生・高校生のお母さん必見!子供が主体的に家庭学習を始めるための声かけ
「ウチの子はいつも遊んでばっかり」「何で勉強してくれないだろう?」そんな思いに悩んでいる方は多いと思います。そこで、あまりにも勉強に対する子どもの意欲が低くてつい勉強しなさい!」と言ってしまうのではないでしょうか。
もちろん、こうした思いや言葉は、実際に大人になって社会に出た実感から出てくるものだと思います。「もっとちゃんと勉強しておけばよかった…」と絶対に思うのに、子どもが自発的に勉強することはなかなか難しいです。子どもの様子を見ながら、「いつになったら真剣に勉強するようになってくれるんだろう…。」と気かがりでならないあまりに、ついつい叱咤激励をしてしまうこともあると思います。今回は、子どもが気持ちよく主体的に家庭学習を行うためのコーチングについて取り上げてみようと思います。
コーチングとは子供の潜在能力ややる気を「引き出す」こと
鈴木義幸氏は、コーチングの定義として「引き出す」ことをあげています。この「引き出す」とは、子どもたちもまだ自分の内側に眠っていることに気づいていない潜在能力や気持ち、やる気などを引き上げ、新しくより主体的に学習に取り組むきっかけ・モチベーションへと変えていくことです。子どもたちの内側には、誰かが引き出さなければ出てくることのない、様々な気づきや可能性が存在します。そこに真剣に取り組むだけで、子どもたちの学びはもっともっと豊かなものになるでしょう。
実際にこれをお読みの皆さんが経験されているように、たとえ親子間であっても、人と人とが向かい合えば、ある種の摩擦が生じます。なぜなら、特に「自分」が確立されていく小学生・中学生・高校生にかけての時期は、自分以外に働かせる「心のシャッター(防衛機制)」が強くなりがちだからです。このシャッターが下りたままでは、その向こう側にあるものを引き出すことは非常に難しいです。
やる気を引きだすコーチングの第一歩とは!
そこで、コーチングの第一歩は、何気ない日常会話の一言一言を大切にすることです。実際、授業が上手なベテランの先生は、生徒に出した指示に対する生徒のリアクションに関して「答えてくれてありがとう」「反応を返してくれてありがとう」「指示したことがきちんとできてすごいね」といった承認や賞賛のメッセージをこめて「ほめる」指導を授業内外で実践されています。ご家庭の中でも、「おはよう」「ありがとう」などの言葉を一生懸命気持ちを込めて伝えることが「引き出す」の出発点になるのではないでしょうか。
そうした関係の中で、「引き出す」ための質問をします。そして、ひとつ答えを受け取ったら、受け取ったことを子どもに伝えてあげてください。「そうなんだね」「そうなふうに考えていたんだね」。それから、もっと「自分から話したくなる」ように質問をします。「それで」「それから」「もっときかせてよ」等々。
このように、「受け取って、受け取ったことを伝え、促し、質問する」過程が繰り返されることによって、子どもたちは「引き出された」という実感を持ちます。
コーチングを家庭学習に応用してみる。大事なのは「一緒に気持ちを共有すること」
・家庭学習では・・・
これを家庭学習に関連するものとして考えると、子どもたちと話すことはたくさん出てきます。学校でやっている勉強、自分の将来の夢、行きたい志望校、自分の好きな教科、苦手な教科、勉強について思っていること、勉強の不安、などなど。考えるときりがありません。
何気ない一言を大切にできる親子関係の中で、どんな声かけをするべきなのでしょうか。実は、言葉自体はあまり重要ではありません。そうではなくて、大事なのは、「子どもの中に答えはあると信じ続けること」。たとえ言葉に詰まっても、親御さんにとって不愉快なことがあっても、粘り強く声をかけ続け、耳を傾け、一緒に気持ちを共有することが大事です。
ケース(1)宿題が出ているはずなのに勉強してなかったら?
例えば、宿題が出ているはずなのに勉強をしていないとします。そこでは、「宿題はないの?」ではなくて、「いつも学校で勉強を頑張ってすごいね」とか「宿題って大変だよね」といったことだと思います。どうしても、小さい頃には「しつけ」をする必要があるので、子どもを怒ったり叱ったりする必要はあります。その結果、親子関係では子どもはいつも萎縮したり「心のシャッター」を閉じてしまったりしがちです。だからこそ、共感や賞賛のまなざし・思いをもった言葉が効果的だと思います。
ケース(2)親子で意見が違ってしまい、何とか言って聞かせたいけれどもどうしたら?
また、学校生活・部活・成績・進路など、親として心配で言いたいことと子どもさんが自分で考えている場合、なかなか声かけ自体、難しくなります。ただ、大事なことは、子どもの思いを「引き出す」こと。子どもの目線に立って、質問の仕方をちょっと変えてみるとよいと思います。
例えば、「どうしてできないの!」ではなく、「何があったらできるのかな?」、「なぜ失敗したの?」ではなく「どうしたら成功できるの?」、「やらないとどうなるの?」ではなく、「やればできるようになるよ!」、「このままでいいの?」ではなく、「どうなりたい?」、「いったい何を考えているの?」ではなく、「私は君の考えを聴きたいな」。このような感じで、子どもさんを一人の「大人」と認めたうえで、相手が話しやすいように声をかけてみるとよいでしょう。
ケース(3)話そうとしても、なかなか応じてくれないけど、どうしたら?
コーチングにおいては、よく、「対面に座る」=「交渉」のイメージ、「横に並ぶ」=「協調」のイメージといわれます。確かに、普通に何か言われる場合と腕を組まれながら言われる場合を想像してみると、後者の方が圧迫感がありますよね。「ちょっと話そうよ」と言葉の上では相手に気を使っていても、態度はそうは見えないかもしれません。
そういう可能性も考えて、自分から「ちょっといい?」と相手の横に座って、あえて「同じ方向を向きながら」話すと、すんなり受け取ってもらえるかもしれません。
お母さんの粘り強い声かけで気持ちを共有、その変化は?
こうした言葉かけを通じて、子どもの気持ちになって「勉強」を見つめてみると、子どもも「なんとができるようになりたい」「勉強してみんなに認められたい」という気持ちが生じることとなるでしょう。「勉強なんか絶対いらない」と心の底から思っている子はまずいません。むしろ、学校や友達など様々な触れ合いの中で自分の人生を一生懸命探しています。そこに、「しつけ」とか「いうことを聞かせる」ではなく、「同じ目線で考える」「耳を傾けて悩みを聞き続ける」親子間のコミュニケーションがあれば、自然と「勉強したい」気持ちを「引き出す」こととなり、暖かなまなざしの中で、自分から家庭学習に向かうようになるでしょう。