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筑修コラム

第6回 偏差値の捉え方と志望校合格


科目ごとの学力状況や志望校への合格可能性など、成績把握の目安になるのが偏差値です。最近では定期試験において算出している中学校もあり、「フクト公開テスト会」や「〇〇県総合模試」など進路指導での重要なデータとして用いられています。
 今回は、このようによく用いられている一方で、実際には誤解されがちな「偏差値」について取り上げていきたいと思います。

偏差値は全体の中での自分の位置を示すもの

 偏差値がどんなものかということを一言で表現するならば、「受験者全体の中での自分の位置を数値化したもの」です。ご存知の方も多いと思いますが、平均点を50としてそこからどの程度離れているかを示す数値が偏差値です。テストでの受験者の得点が理想的なばらつきになった場合、トップから約15%で偏差値60、下から約15%で偏差値40くらいになります。このように平均点からどのくらい離れた順位にいるのかを表す数値なのです。だから、平均点が70点の中での80点と平均点が40点の中の80点とでは、同じ点数でも偏差値は大きく違います。試験の難易度にかかわらず、受験者全体の中でどのくらいの位置にいるのかを把握するための数値が偏差値なのです。つまり、学力の高い生徒が多く受ける試験と学力が低い生徒が多く受ける試験では同じ学力でも偏差値が異なるということになります。

 偏差値はその回に受けた試験においてのみ有効な数値です。受験者や問題の難易度が異なると同じ学力でも偏差値は変わります。「全統模試」・「進研模試」などのように大規模な試験では、各回の問題難易度を調整することで、点数と偏差値をできるだけ一定に保つようにしているものもあります。しかし、受験者の学力は常に一定ではありません。同じ人物でも学習を重ねて学力が上がったり、勉強をサボって学力が下がったりします。そういった一人ひとりが集まって受験したテストの中での位置を示す数値ですから、受験者の顔ぶれやその時々の一人ひとりの頑張り具合によっても偏差値は変わってしまうのです。

偏差値が上がるということ

模試の成績表で「志望校判定」が記載されるようになると、生徒本人も親御さんも「3科総合偏差値」「5科総合偏差値」を気にするようになります。このあたりから塾や学校の三者面談のときなどに、親御さんの口から思わず「頑張りが足りないから偏差値が上がらない」とか「家でちっとも勉強しないから偏差値が上がらないんです」などという言葉が聞かれます。

 しかし、本当に頑張りが足りないから偏差値が上がっていないのでしょうか?

 上のグラフをご覧下さい。例えば中学3年生がみんな受験に向けて頑張って勉強していくと偏差値50(=ちょうど平均にある生徒の学力・知識量)の学力レベルは月日がたてば上がっていきます。4月に解けなかった問題も9月には多くの生徒が解けるようになっていくからです。3人のなかでBさんは当初から偏差値55くらいで今も55のままなので、「偏差値が上がっていない」生徒なのですが、平均の学力レベルと同じ割合で学力が向上していることがわかります。つまりBさんは「頑張りが足りないから偏差値が上がらない」のではなく「人並みに頑張っているから偏差値を維持できている」ということになります。
 C君の学力も上がっているのですが、平均点の上昇に抜かれてしまい、偏差値は50を切ってしまいました。A君は当初平均点を下回り偏差値も50を切っていましたが、人一倍の努力の結果平均点の上昇よりずっと早いスピードで大幅な学力アップを果たしました。そして偏差値も大きくアップしました。

 もちろん今の学力よりずいぶんと高い志望校を目指しているのであればA君にならなければなりませんし、みんなA君を目指してほしいのですが、Bさんタイプだって「まずまず頑張っている」事を理解し、頑張っていることを認めてあげるも大切だと思います。またA君が今の学力のまま立ち止まってしまうと、平均点が追いついてきてしまいますので、偏差値は徐々に下がっていくことになります。

志望校に合格するには?

 つまり、「周囲と同じような努力」を続けているうちは、偏差値を上げることは難しいでしょう。周囲以上に努力することで偏差値は上がります。そしてそれを継続することが大切です。

しかし偏差値はあくまでも同じ試験を受けた人たちの中での位置を示すもの。受験校や問題の傾向が異なれば合否の可能性も変わってきます。志望校に合格するには、志望校の試験で合格基準以上の点数を取ることです。受験しない学校の問題でいくら高い点数が取れても合格にはつながりません。ですから、受験する学校の出題傾向をよく研究してその問題に対応できる学力を身につけることを忘れないで下さい。

 英語長文重視の学校ならば単語力を基礎としつつ多読重視の学習が必要ですし、SpeakingやWriting、Listeningが重視される学校ならば、それらの技能を集中的に伸ばす取り組みが必要でしょう。また、数学の10点も英語の10点も同じ価値を持ちます。みんながクリアできる易しい問題で10点を取りこぼすことは命取りにもなりかねません。ですから、苦手科目や苦手単元をなくしていくことも効果的だといえるでしょう。今年受験を迎える皆さんはここまできたら偏差値よりも当日の得点のことを考えてください。今日の模試と同じ問題で同じメンバーと競うわけではありません。受験校の受験日に出題された問題で、受験生の中で合格基準になる点数より1点でも多く得点することを目指してください。

 特に、日本の高校では「英語が苦手だから理系」・「数学が苦手だから文系」とネガティブな理由で進路選択をしがちです。自分の本当にやりたいことが見つかった時に困らないようにするためにも、自分に必要な学習や苦手な分野から手を付けることが大事です。

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